『あなたにとって「肝心なこと」とは?』
(谷神父様は現在入院加療中につき、定光教頭先生による寄稿文を掲載いたします。谷神父様の早期退院を願い、お祈り下さい。)
“It is only with the heart that one can see rightly. What is essential is invisible to the eye.” この言葉は「星の王子さま」という本からの抜粋です。「心で見なくちゃ、物事はよく見えないってことさ。肝心なことは、目に見えないんだよ。(岩波少年文庫:内藤 濯 (著) )より」という内容です。
著者はアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。サレジオ生の多くはかつてどこかでこの本に接したことがあるのではないでしょうか。この作品は読むたびに人間についての多くを教えてくれます。あらすじは次のようなものです。
王子さまが住んでいる星はとても小さな惑星でしたが、その星にある日どこからともなくバラの花の種が飛んできて大変きれいな花を咲かせます。王子さまはそのバラの花をとても愛し大切にします。しかし、一緒に暮らし始めるとバラの花はわがままを言い始め、気難しくうぬぼれ屋でもあったので王子さまはとても疲れてしまいます。そこで王子さまは思い切って自分の星を離れる決心をするのです。それから王子さまは様々な星を旅して回ります。例えば、王様やうぬぼれ男の星、飲み助や実業屋の星、点灯夫や地理学者の星など。人間の様々な内面を擬人化したような住人のいる星を巡り、最後に地球へとやってきます。その地球でパイロットである「ぼく」と出会い、物語はさらに進展していきます。
このままあらすじを語り始めると今回の話の枠には収まりきらなくなってしまいますのでこのへんで割愛させてもらいますが、物語の中にはたくさんの “What is essential” つまり「肝心なこと」が出てきます。
例えば、バオバブの木の話では「小さな事でも手抜きをすると、大変なことになってしまう。些細なことにこそ忠実に。」という教訓や、王子さまとバラの花、そして、キツネとの交流の場面でも「友達を作る時の辛抱と決まり事の大切さ。たくさんの友達がいることよりも一人でも無二の親友がいることのありがたさ。人を大切で掛け替えのない存在にする“人のために暇をつぶすことや無駄な時間を費やすこと”の価値。一度でも関わったことがある人への責任。」など、様々なエッセンスが提示されています。
また、砂漠の中に隠されている井戸の話では、「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠してるからだよ」「星があんなに美しいのも、目に見えない花が一つあるからなんだよ。」と王子さまは語りかけてきます。とても印象的で美しい場面です。
さて、サレジオ生の皆さん一人一人の中にも、まだ発見されていない貴重な井戸や目に見えない美しい花が隠されたままになってはいないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症拡大のために現在登校はかないませんが、せっかく与えられた貴重な期間です。時間の許す限りこうした美しいものや素晴らしいことに触れ、精神を高める作品を読んだり、見たり、聞いたりしませんか。そのためにも「星の王子さま」をもう一度じっくりと味わい、緊急事態宣言が発令される前までは慌ただしく気付くことのなかったことや忘れ去られていたかもしれない “What is essential”「肝心なこと」を振り返り、王子様と一緒に旅をしてみてはいかがでしょう。
ひょっとしたら、空の星の笑い声に混じって、王子さまの笑い声も聞こえてくるかもしれませんよ。