(以下は谷神父様に代わり、教務部長 小川先生による『朝のはなし』です)

 

早速ですが、今日2020年10月1日は何の日でしょうか。…はい、今日は「中秋の名月(十五夜)」の日です。「中秋の名月」とは「秋の真ん中の名月」という意味です。かつて使われていた暦(旧暦)では,7月から9月が秋とされています。ですから、秋の真ん中は8月15日です。今日は旧暦では8月15日にあたり、一年で最も月が美しく見える日とされています。いつもは忙しくて夜空を見上げる機会はなかなか無いかもしれません。今は天気が良くありませんが、今後天気が回復し,夜になって星空が見えてきたら、ススキやお団子を用意して少しゆっくり、月を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

さて、毎年10月に入るこの時期になると気になり始めることがあります。…それはノーベル賞です。ノーベル賞の授賞式は、毎年ノーベルの命日にあたる12月10日に行われるのですが,その約2か月前、今年は10月5日の生理学医学賞を皮切りに物理学賞、化学賞などの授賞者が発表されます。ここ数年、日本人の受賞が続いています。覚えていますか。…昨年、2019年は吉野彰氏のリチウムイオン電池の発明という業績に対して化学賞が、2018年は本庶佑氏のガン治療薬「オプジーボ」の開発につながる研究に対して生理学医学賞が、そして、2016年には大隅良典氏が細胞にみられるオートファジーという現象のしくみを解明した業績に対して生理学医学賞が授与されました。今年も日本人から選ばれるでしょうか。期待したいですね。日本人の受賞が無くても、その年の受賞から、医学、環境問題、社会問題に至るまで、現在人類が、そして世界が、どのような課題に直面しているのかを知ることができます。

 

ここでノーベル賞創設の歴史を振り返ってみましょう。ノーベルはダイナマイトを発明したことで知られるスウェーデン人です。ダイナマイトはトンネル工事や鉱山の採掘などの効率を飛躍的に高めました。しかし一方で、ダイナマイトは戦争などに使用され、多くの人の命を奪うことにも使われるようになったのです。ノーベルはこのことに大変ショックをうけ、その遺言にもとづいてこの賞が創設されました。

 

このいきさつは,科学をはじめ、さまざまな物事には光と影の部分があるということを示しているのではないでしょうか。物事の光が当たっている部分には多くの人が注目しますが、影の部分・負の側面もあることも忘れてはならないと思います。

 

夜空に浮かぶ月を見るときも、光っている部分に目が行きますが,影の部分に目を向けることはあまりありません。今夜、月を見ることができなかったとしても、月を眺める機会があったら、光っている部分だけではなく影になっている部分にも目を向けて、今お話したことを思い出してくれたら 嬉しく思います。