松浦静山に学ぶ「マルチを追い求める姿勢」
プロ野球のペナントレースも大詰めを迎え、あとはCS日本シリーズを残すのみでしょうか。さて、みなさんは「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を知っていると思います。部活の顧問の先生からも聞いたことがあるのではないでしょうか。では、誰の言葉か知っていますか?
普通キャッチャー、監督、野球解説者で有名な野村さんの言葉だと思っている人が多いと思います。彼は『負けに不思議な負けなし』という本も書いています。しかし、先日読売新聞の日曜版を読んでいて初めてこれが松浦静山(せいざん)の言葉だと知りました。
初めて聞く名前だと思いますが、彼の著書「剣談」にある言葉だそうです。「剣談」という名前からも分かるように彼は剣術の使い手、しかも心形刀流(しんぎょうとうりゅう)免許皆伝の腕前を持っていた達人だったそうです。
剣術遣いならなるほどと思うかもしれませんが、この松浦静山という人は実は江戸時代現在の長崎平戸にあった平戸藩第9代藩主をつとめていました。本業の藩の政治・経済・外交を司るだけでなく、彼は広く学問も修め、蘭学やキリスト教にも興味をもっていたそうです。
つまり「負けに不思議の負けなし」という言葉は単に剣術の極意であるだけでなく、いろいろな彼の経験、例えば他の藩との駆け引きでの痛い思いなどに裏打ちされた言葉、また広い知識や教養が凝縮された言葉なのでしょう。
そのように考えるとこの言葉の背景にある深みや松浦静山の貪欲に学ぶ姿勢に改めて尊敬の念を抱きます。一言で言えば松浦静山はマルチな人でした。
みなさんも様々な分野に挑戦し、そこで得た情報のネットワークを築き、「単体の知識」から「生きた、活用できる知恵の体系」を編み出してください。