サレジオ学院の入学試験合格発表の朝、一人の男性がわたしを驚かせました。

食い入るように合格者掲示板を見つめたその男性、やがて眉間にしわを寄せ、固く目を閉じてしまいました。望む番号がそこに無かったのでしょう。暫くして、高く天を見上げたかと思うと、大きく息をつき、踵を返して歩き始めます。やるせない気持ちで一礼し見送っていると、はっとしてこちらの存在に気付き立ち止まります。おやっ?と思う間もなく、体をこちらに向け直し「ありがとうございました!」と中庭中に響く声で挨拶をし、深々と礼をしたのです。びっくりしたり恐縮したりで、こちらも改めて最敬礼で応えたのですが、返す言葉が見つかりません。しかし、本当はこう叫びたかったのです。「あなたが付いていて下さるならば、息子さんは大丈夫です!」どういう意味かは想像してください。

 昨日は体育祭、お疲れ様でした。随所に、サレジオ生らしさが見られる、良い行事だったと思います。努力が報われたことを思いっ切り喜ぶ姿はもちろんのこと、思うように行かなかった中にも他者に対する感謝・尊敬を忘れない「リスペクトの精神」が、君たちの中に息づいていることをしっかりと見せて頂きました。こういったサレジオの精神は、学校が君たちに提供したものではなく、サレジオでの生活を通して、君たち自身の中から湧き上って来たものであり、お互いに与え合って来たものなのです。
サレジオのアッシステンツァの神髄は、アッシステンツァの必要のない男に育ってもらうことです。君たちに必要な物は、既に君たちの中にある。それを育てて行ける環境に、あらためて感謝しましょう。