『ラグビーと教育』
ラグビーのワールドカップ開催を終えて、日本のトップリーグが1月12日から始まりました。ラグビー選手たちはスタンドの観客の多さに驚いていたようです。ワールドカップを契機に「にわかファン」が急増した結果なのでしょう。
ラグビーは、1823年イギリスのラグビー校に転校してきた生徒が、フットボール(現在のサッカー)のルールを知らずに、ボールを抱いてゴールを目指して走り抜けた出来事が始まりとされています。
このラグビーを青少年の教育の一環として用いたのが、1828年にラグビー校の校長に着任した聖公会のトマス・アーノルド神父でした。彼は学校のカリキュラムを大胆に改革し、知力だけではなく、全人的な人格教育を徹底的に重視した教育を実践しました。教育の基軸となったのは、キリスト教教育と共にスポーツでした。
とりわけラグビーは、共に困難に立ち向かい、問題を解決していくこと、また相手の立場に立って敗者の痛みや悔しさにも心から共感することの大切さを学ぶことが出来るからです。それは試合中に激しくぶつかり合ったとしても、試合が終わった瞬間に相手と抱き合って健闘をたたえ合う、いわゆる「ノーサイド」の精神です。更に、ラグビーは紳士のスポーツとも言われ、身だしなみ、言葉遣い、行動などにも気を付けるよう指導されることがあります。
アーノルド校長はこのようなスポーツが、キリスト教に基づく多様性を尊重し、共生を目指す全人格教育に重要な意義を持っていることを訴え続けました。このアーノルド校長の意思は、現在も息づいており、様々な国の代表選手の多様性を引き出しています。