『上善は水の如し』
「上善は水の如し」は「老子」の中の一文です。理想的な生き方をしたければ、「水」の在り方に学びなさいと言います。
水には学ぶに足る3つの特徴があります。第一に水は極めて柔軟な在り方を持っています。四角な器に入れれば四角な形になれるし、丸い器に入れれば丸い形になれます。これは所属する組織や時代や状況に応じて柔軟に自分の在り方を変えて歩んでいきなさということでしょう。
第二に低い所に身を置くことは誰でも嫌がることですが、水は人の嫌がる低いところ低い所へ流れていくように、すこぶる謙虚であるというのです。これは、自分の能力や地位を誇示しようとしない在り方が大切だと言うことです。
これについてはイエスも似たことを教えています。「宴席に招かれたら上座に座るな。あなたより偉い人が来たら恥をかくだけだ。だから末席に座りなさい」とか、「偉い人のように衣に細工を施したり、町でラッパを吹くようなことをするな。博識な人が来れば恥をかくだけだ」とも言っています。よほど頭に来ていたのでしょうか。
日本の諺にも「能ある鷹は爪を隠す」とか「実るほど頭を垂れる稲穂かな」とも言います。中国の「左伝」という書物には謙虚であることが「徳の基本である」とも教えています。謙虚さはどこでもどの時代でも大切な在り方なのです。
第三に、水はものすごいエネルギーを秘めています。急流ともなれば、固い岩石をも打ち砕いてしまいます。この水のように、長い人生という流れの中で、様々な場所や機会を得たら、そこで必要な力や能力を養いながら問題を乗り越えていくエネルギーを貯めていきなさいと教えているのでしょう。
このように水は柔軟、謙虚、秘めたエネルギーの三つの特徴を持っています。人間もこの特徴を身に付けることが出来れば、理想の生き方に近づけるのだと教えています。