今日は『ドラえもん』の「ヘソリンスタンド」という話を紹介したいと思います。

 「ヘソリンスタンド」という機械は、おへそに突っ込んで、「ヘソリン」というガスを注入する装置です。この「ヘソリン」というガスを注入すると、悲しみや苦しみ、痛みを感じなくなります。怒られても、殴られても、何も感じない。いつも幸せな気持ちになるというガスなのです。1回10円でガスを注入すると、その効き目は30分間。30分たつと、効き目が切れて元通りになります。そこで、のび太ものび太の友だちも、みんな10円でヘソリンを注入し始めます。そして効き目が切れると、またすぐに10円を入れて、ヘソリンを注入しようとします。

そこでドラえもんがのび太に警告を発します。
 「『痛い』という感覚が消えることは、大変なことなんだよ。『痛い』という感覚は人間に危険を知らせる信号なんだ。もし、人間がなんの痛みも感じないままだったら、怪我をしたときにも気づかないで、病院に行って手当てを受けることもできないし、病気だってことにも気づかない。そして、もっと恐ろしいことは『心の痛み』もわからなくなってしまうことなんだよ。いくら叱られても、笑われても平気なら、人間はとんでもないことを平気でするようになってしまうだろう?」と。

「痛み」「悲しみ」「苦しみ」から逃げたいのは誰でもそうです。しかし、「痛み」「悲しみ」「苦しみ」を感じることから逃げてばかりいては、何が本当に人間にとってつらいことなのかもわからなくなってしまいます。そして、「他者が痛む、悲しむ」ということもわからなくなるのかも知れません。

際限なく、他者に痛み・悲しみを与える出来事があまりにも多いと思います。社会でも私たちの周りでも。

そんな、私たちが生きている「今」は、もしかしたらドラえもんの警告があたっているのかもしれません。