翻訳アプリでコミュニケーション?
皆さんはVoice Traと言うアプリを知っていますか?日本のNICT、国立研究開発法人情報通信研究機構が開発した多言語音声翻訳アプリで、英語だけでなく世界31言語に対応しています。無料なので試しにダウンロードして使ってみましたが結構優れものです。
先日このVoice Tra の開発を担当した隅田英一郎さんの話をラジオで聞きました。翻訳ソフトの開発はすで30年もの歴史があります。遡ると初期には単語や文法をコンピュータに教え込むことからスタートしたのですが、なかなかうまくいかなかったそうです。
皆さんも単語と文法を覚えたらすぐ英作ができるようになるわけではないことを体験していますね。例えば助詞の「の」を含んだ英文を考えてみてください。
「サレジオの生徒」はa student at Salesian High School
「壁の絵」はa picture on the wall
「長い髪の少女」はa girl with long hair
日本語の助詞「の」は英語ではof 以外にも様々な前置詞に置き換わります。このような個々の違いを文法ルールで処理することは大変です。
ここからソフト開発は第2段階に入りました。視点を変えコンピュータに様々な文章の原文とその翻訳のデータを送り込み、似たような表現から適切な語法を見つけ出す方法を開発しました。皆さんが「語法問題」や「コロケーション問題」で個々の言葉の使われ方を覚えるのと同じことでしょう。翻訳ソフトの開発と受験勉強、どこか似ていますね。そして現在はAIを活用しながら膨大なデータによって精度をあげる第3段階だそうです。
翻訳ソフトの開発研究の苦労を知り、とても感銘を受けたのですが、どこかで引っかかるものもありました。翻訳ソフトがあれば人と人とのつながりは本当に深まるのか、という疑問です。人と自分との信頼関係を築くには共通の言語を使ってこそ、また目の前の人の痛みを理解するため一生懸命聞こうとするとき翻訳は逆にそれを妨げてしまうのではないか…私がその時感じた違和感はそんなものでした。皆さんは翻訳アプリどう使いますか?