先日、あるラーメン屋さんに入ったときのことです。駐車場に車を停め、店の方へと歩いていくと、ガラス越しにいち早く気付いた店員さんが、「おひとりですか」とばかりに指を一本立てて微笑むので軽く頷くと、「カウンターへどうぞ」という仕草で席を指して下さいました。ドアを潜って案内された席に着き、別の店員さんに注文を済ませたあと、ようやく「おや?」と思い至ったのですが、…一体なんだと思います?ホンの僅かな違和感。あまりに店員さんの仕草が分かり易過ぎたために抱いた違和感。その原因を探っていくと、一つの結論に行き着きます。「ぁあ、あの店員さんは耳が不自由なのか。」ガラス越しで声が届かないから手振りで示したのではなく、口がきけないから分かり易くジェスチュアを使って案内して下さったのです。
 自分の推理を確かめようとその店員さんに注目していると、ハンデなど物ともせず、精一杯心を込めて仕事をしているのが伝わってきて、なんだか応援したくなって来ました。そこで、教会で教えてもらった手話を駆使して会話にチャレンジ。…と言っても、会計の時に「ありがとう!」と手話で伝えただけなのですが、驚いたことにその店員さんは、今までの数倍すてきな笑顔で「ありがとうございます!」と「手話で」返して下さったのです。「ああ、励まし成功!」って実感できる体験でした。ところで、わたしの何がその人を励ましたのでしょうか。
 もちろん「ありがとう!」という言葉は大切ですが、それを伝えるために壁を打ち破ったことがその人の心を動かしたのだろうと、私は考えています。「相手に届く言葉を使う」ということは、その人を尊重すること(=respect)です。英語を学ぶことで多くのリスペクトを示すことができます。マイナーな言語を学べば、相手に対するリスペクトの度合いは跳ね上がるでしょう。そして、日本語で語るときにも、相手に届くことを第一において言葉を選ぶようにしましょう。特に日本人は「何を伝えるか」にも増して「どのような態度で伝えるか」を大切にしています。…これこそ、リスペクトの精神ですね。