臨死体験と良き死の練習
NDE臨死体験という言葉を聞いたことがあると思います。Near Death Experience=死に近い体験…ですから、危うく一命を取りとめた人の特殊な体験。具体的には自分の肉体を離れて世界を眺めたり、慈愛にみちた光と出会ったり、トンネルを潜り抜けて花畑に辿り着いたり、亡くなった家族が現れて「ここに来るのは未だ早い」と言われて引き返したりといった、いくつかの共通したパターンが報告されています。
興味深いのは、NDEの後に「他人への配慮・命への畏敬の念・競争主義からの離脱・自己肯定感の増幅・死への恐怖の消失…」等、価値観が大きく変わったという報告があることです。わたしの知人も、臨死体験の後「清く生きなければならない」と強く意識するようになり、魂を汚す行為(彼によれば、人をだましたり、人のものを奪ったり、お金に執着したり、人を蔑んだり、憎んだり、嫌ったり、虐めたりするすべての行為は人間の魂を汚す行為なので、決して進んで与してはいけないのだそうです。)を極力避けるようになりました。
臨死体験が何故このように心の変化を生むのかは明確には分かりませんが、人は死を意識すると人生の清算を始めるようです。近年では年齢的に死が近づけば、「終活」に取り組む人が増えていますが、ドン・ボスコはサレジオ会員たちに「良き死の練習」という習慣を残しました。月に1回、大掃除をし、借りているものを返却し、仲たがいしていれば仲直りをし、心を神に向け、罪の赦しを受ける。自分の死がいつ訪れるかは分かりませんが、だからこそ「魂を汚す行為」から離れ、「清く生きる」ことを意識してみませんか。