無駄の効用
「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」
マタイ福音書とルカ福音書に出て来る極めて有名な聖句ですから、皆さんも聞き覚えがあることでしょう。
さて、みなさんが何かを探し求めるとき、スマホやタブレットを用いることも多いと思いますが、新しい単語を調べる際にスマホを使うのはお勧めできません。それは「探す」ことにならないからです。
人間が人間らしくあるためには脳の前頭前野の発達が欠かせませんが、スマホで知らない単語の意味を調べても、前頭前野の働きは、ボケっとしているときとあまり変わらないそうです。一方で紙の辞典や辞書を使って調べ物をした場合には、この部分がとても活発に働く。ページをめくる動作や、多くの情報の中から必要な情報を選び出すという、一見無駄に思える作業が脳の活動を活発化させているようです。前回指摘したマニュアル重視の問題点と同様、回答が簡単に提供されるシステムは、人間を人間らしくさせる過程が省略されています。
効率性のみを追求して結果をインスタントに求めるのではなく、持てる能力を駆使し、試行錯誤しながら、苦労して何かを獲得する。生み出す。その過程こそが脳を活性化し、人間としての相応しい価値観を養い、自らの召命を見出すための材料を与え、神と人々とに喜ばれる「本当のあなた」を造り上げていきます。探求の旨みは、何かを簡単に受け取ることにではなく、苦労して自ら獲得していく過程にあるのです。今、何かに苦労しているあなた。人間として成長しているところですよ。(耳元で囁くように…)ガンバレ!