相手の立場に立つ事は出来るのか?

ギフト

U子ちゃんという目の不自由な女の子。おとぎ話や不思議な物語が大好きですが、目が見えないため普通の本を自由に読むことができません。そこで、読み聞かせの高校生ボランティアK子さんが来てくれると聞くと、大喜びしました。

 

心の優しいK子さんは、そんなU子ちゃんのことが一遍で大好きになり、自分がこの新しい小さなお友達、U子ちゃんのために何をしてあげられるのか色々と考え始めました。そこでふと思いついたのが「相手の立場になって考えてみる」ということ。ある日、K子さんは半日間目隠しをして過ごすという決意をし、実行に移します。

 

ところが、これがなかなかに大変。お茶が飲みたくなっても、それを用意するまでが一苦労。ヘマをして火傷をしやしないかとビクビク。また、ちょっとした段差にはつまずくし、色々なものを蹴飛ばす始末で、最後には不安になって、一時間ほどで諦めてしまいました。「目が不自由って、こんなに大変なことなんだぁ…。」

 

後日、K子さんはこの経験をU子ちゃんに話してみました。「…U子ちゃん、色々と怖い思いをしているんだね?大変だね?」するとU子ちゃんはケラケラと笑い出し、「K子お姉ちゃん、私はお姉ちゃんと違って一人でお茶も淹れられるし、段差に気づかなかったり、物に気づかずにぶつかったりすることは殆ど無いんだよ。だって、私にとっては目が見えないのが当たり前だもん。…でも、お姉ちゃん、ありがとう!」そう言うとK子さんに抱き付いて離れませんでした。

 

人間は所詮、自分の経験を通してしか物を考えることができない存在です。ひょっとすると、相手の立場になって考えるなどというのは幻想に過ぎないのかもしれません。しかし、そこで諦めてしまうか、努力を続けるか。何が大切で、何が人を幸せにするのか。是非、考えてみてください。繰り返し、何度でも言いますが、皆さんには「人を幸せにできる人」になって欲しいのです。

 

榎本飛里