ある国で、全国民を対象に、こういうお触れが出ました。

   
『王の立会いのもと、日の出から出発し、日の入りまで歩き回った土地を所有地として与える』。人々は半信半疑でしたが、自分の土地を獲得して、裕福に暮らしたいと望む何人かの人たちが王のもとに集まりました。

  
最初の人は、自分の家が建つ土地と生活に困らない程度の農作地を貰う為に、日の出に出発し、体力があるうちに元の場所に戻ってきました。王様は「これだけの土地でいいのか、まだ日が高いが大丈夫か」と尋ねると、その人は「自分が必要としている土地を確保しました。それ以上は望みません。十分でございます」と答えました。王様は「それではこれが土地所有の証明書だ。受け取りなさい。」

   
次の人は、自分たち家族が耕作できる広さの土地を望みました。彼等は同じように日の出に出発し、家族全員で耕作できるくらいの土地の広さを確保して、日がまだ高いうちに戻って来ました。王は「まだ日が高いが、それでいいのか」と尋ねると、彼らは「自分たちの能力を知っています。それ以上は無理なので望みません」。同じように王様から土地所有の証明書を貰います。

   
自分の能力や自分の夢を持った人たちが同じように土地を獲得していきます。こういう人達を見て、あざ笑っていた人がいました。「もう少し要領よく行動すれば、国の半分も貰えるものを馬鹿だなあ」と。

   
さて、他人を侮辱していた人の番となりました。日の出と共に、彼は走って行きます。何kmも走り、元の場所が見えなくなる距離を稼ぎました。「よし、次の場所に移動しよう」

   
彼はまた何kmも走って行きます。太陽が昇って、次第に暑くなってきます。体力が落ちてきました。ちょっと休憩し水分補給と食事を摂ります。「さあ、次の地点まで行こう」と立ち上がりますが、最初の勢いは無くなり途中から歩き出します。「あと、もう少し行こう」

   
次第に太陽が沈み始めます。「もう少し、あともう少しだ」と貪欲さを出しながら歩き続けますが、残念なことに太陽は沈んでしまいました。彼は出発した元の場所に帰り着くことが出来ませんでした。なぜ、彼は失敗したのでしょうか。
 
   
それは自分の能力を過信していたか、何のために土地が欲しいのか明確なビジョンや計画が無く、ただひたすらに誰かより多い土地が欲しいという考えしか持っていなかったから失敗したのかもしれません。

   
この話は、チャンスが到来した時に、私達はどのように振る舞うべきかを教えているようです。目的が明確なのか。何のために行動しようとしているのか。そういう考え方が無いと、やみくもに走ってしまって何も得られないことになります。

  
皆さんなら、どうしますか?