『和歌 三十一文字の世界』
こんにちは。期末試験が近づいてきました。ということで今日は古典、その中でも和歌のお話をしましょう。最初に質問です。平安時代の才女、百人一首にも選ばれた歌人というと誰を思い浮かべますか? 紫式部、清少納言?でも「その人は破天荒、恋多き女性だった」というとちょっと違うかも . . . 実は今日は和泉式部という人のお話です。
和泉式部という名前は旦那の役職、和泉国守(いずみこくしゅ)から取られた名前。恋多き女性で、親王からも言い寄られ身分の違う恋に身を焦がすなどスキャンダルの連続です。当時の有名人で栄華物語、大鏡にも彼女の名前は登場するそうです。同じ中宮藤原の彰子(しょうし)に仕えていた紫式部にとって和泉式部はライバルでかつ眉を潜めるようなゴシップクイーンでした。
このような自由奔放な和泉式部でしたが、こんな歌も読んでいます。
「とどめおきてだれをあわれと思ふらむ子はまさるらむ子はまさりけり」
これは『後拾遺和歌集(ごしゅうい)』「哀傷」に収録されている自分の娘を亡くしたときに詠んだ歌です。実は和泉式部には小式部内侍(こしきぶのないし)という娘がいました。しかし小式部内侍は子供を産んですぐ亡くなってしまったのです。和泉式部の嘆きはいかばかりだったでしょう。子供を失った母親の気持ちをわずか三十一文字にぎゅっと込めました。
和泉式部の思いを探っていきましょう。下の句に二度出てくる「子」はそれぞれ誰のことを指すでしょうか . . . それぞれ詠嘆を表す「けり」、推量を表す「らむ」はそのヒントとなるでしょう。そして係助詞「は」一文字で「母親なのだから」という強い思いが伝わります。
歌の意味はこうです。「亡くなった後、娘は誰のことを思い出しているのだろう、それは母親の私のことじゃなくて、自分の子どものことだろう、だって、私も今、娘のあなたを失ってこんなに悲しんでいるのだから」。最愛の子供を失った母親の哀しく切ない歌でウルウルしてしまいます。
子を亡くした母親の思いは三十一文字の小さな器に収まり、そして時代を超え多くの人との涙を誘う . . . 和歌の世界とはこんなに深く広いんですね。
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