越境列伝 その4 〜横浜ダニエル 家具の学校 校長 島崎さん 〜
横浜元町にダニエルという家具の工房があります。ダニエルは明治初期、横浜に来港したイギリス人の依頼から始まった伝統ある工房です。素材から選び一つ一つの家具を時間をかけ丁寧に作り、その大切さを消費者に伝えることを信条としているそうです。
ダニエルには単に家具の製造販売だけでなく、家具作りの技術を伝える「家具の学校」という施設もあります。「家具の学校」のスタッフはみんな何年も家具を作ってきた職人さんです。
先日「家具の学校」の校長先生の島崎さんのインタビューを観ました。先生はものづくりの伝承について話していましたが、それは単に技術的なことにとどまらず、先生の生き方、人間観にもつながる深みがあったように感じました。先生はこのように話していました。
「私が習得したもので良いと思うことをみんなに伝えていくこと、それは「伝えていきたい」というより義務だと思います。私も先輩から学んできました。私もそういったものを常に伝承していく、受けた松明をちゃんと次の人に渡す義務があります。「やりたい」、とか「したい」ということじゃない。私が今日あるのは、そうゆう人たちから恩恵を被ってきたから。自分が恩恵を被ったらそれでいいならそれは人間じゃない。生活ができればそれでいいじゃない。自分がそこまで稼げるようになった、自分がそこまで知ることができたのは恩恵を被ったから。恩恵を被ったんだから次に伝えていく義務がある。だから『伝えたいですか?』なんていうのは、失礼な言い方かもしれないけど、そんなのは愚問ですよ。当たり前じゃないですか。」
「当たり前じゃないですか」という最後の言葉には本当に力が込めれていました。島崎さんは伝えてくれた人がいた「これまで」、そして伝えていく人がいる「これから」、過去と未来に思いを馳せているのでしょう。
「ただで受けたのだから、ただで与えなさい」というイエス様の言葉にも通じるものがあるように思います。(マタイ10:8)
受けたものを次に伝えるのは義務であるという。これも越境の一つの形ではないでしょうか。越境列伝その4は家具会社横浜ダニエルの島崎さんのお話でした。